イタリア、イモラ。
何故か僕がホテルで機材一式を盗まれた、いい思い出の少ない場所だ。
そしてやはりいつになっても特別な日に違いはない。
あの日、あの時、僕はその場所にいた...
どうしても忌まわしい週末だったと、その一言で片付けるわけにはいかない。
それから10年後に写真集を出し、サンパウロへ墓参もした。
でも今でも不思議だ。
あのセナが、そんなはずはない...
彼とファインダー越しに対峙した一枚がある。
不思議と周りには僕しかカメラマンがおらず、
セッション後にピットから出てきた彼と偶然出くわしたのだが、
彼は僕のカメラから目を逸らそうとはしない...
ならばこちらも逸らすわけにはいかない。
だが悲しいかな当時は36カットのフィルム時代...
僕はシャッターを押し続け、やがてワインダーの巻き戻しが始まった。
その瞬間、セナがニヤリと悪ガキのような笑顔で僕の前から去った...
その瞬間、何故か負けたと思った。
でもどうしてか悔しさはなく、僕もファインダーから目を外し笑っていた。
56歳の彼はどんなだろうか?ふと想像をする。
腹も出て頭も薄くなり...(笑)
現実の僕は歳を重ねて老いていくが、イメージの中の彼はそのまま。
なんか狡い気もする。そして不思議な気分だ。
Adeus Ayrton!